陶芸倶楽部

まなび百科TOP 陶芸チャンネルどろんこTOP 陶芸チャレンジTOP

楕円に作る、手びねり花器

もくじ
●  はじめに
/ 制作物一覧 / すがわら陶芸部会について / レイカフェについて / 記事を書いた人について

● 楕円に作る、手びねり花器 / ▶ 準備物について

● 作り方レポート 
①タタラ技法で土の板を作る/ ▶土練りをする  / ▶土を伸ばす / ▶土を均す
/ ②土を切る / ③土を巻く / ④組み立てる その1 / ⑤組み立てる その2 / ⑥整える
/ ⑦高台を作る / ⑩素焼きする / ▶素焼きとは?/ ▶作業工程 / 
/ ⑪撥水処理をする / ⑫釉薬をかける
/ ⑬本焼きを行う / ▶窯入れ・窯出し作業 / ▶本焼きをする理由 / ⑭完成

● 完成品を展示しました / ▶ 制作者感想 / ▶ レイカフェさんより / ▶ すがわら陶芸部会より

準備物について





   ・土1kg程度
   ・手回しろくろ
   ・作業板(作品が乗るサイズ)
   ・筒 大と小
   ・針
   ・粘土ヘラ
   ・釉薬
   ・撥水材
   ・筆

作り方



▲菊練りが終了した時の土の形

工程① 菊練りで土を整える


   買ったばかりの土は、空気が入っています。
   また、購入して数週間経ってしまった土は、
   たとえ密封していても表面から水が抜け、
   固くなってしまっています。
   これを練って均一のやわらかさにし、
   空気を抜いていく作業を土練りと言います。
   今回は陶芸部会の先生が鮮やかに菊練りをしてくださいました。
   練りあがった土の形が菊の花のようだから菊練り、と言います。
   ちなみに、菊練りをまっとうにマスターするには
   だいたい3年かかるといわれており、
   力の入れ方、土の回し方、なかなか鍛錬のいる技法のようです。


▲均一の太さを保てるかどうかで、次の作業の精度が変わってきます
 

工程②底板を作り、土をひも状にする


   土の調子が整ったら、底板を延ばします。
   こぶし大の土を手ろくろの上で回しながらたたき、
   12㎜程度の厚さに伸ばし、針で丸く切ります。

   底板ができたら、今回は陶芸基本の紐づくり!
   名前の通り、土をひも状にしていきます。
   太さは大人の親指ぐらいでながーく作ります。
   大切なのは均一な太さに仕上げること!
   指の腹で、場所を替えつつコロコロと伸ばします。



▲指先の感覚を大切に!

工程③土を巻く


   ザ・陶芸と言えるわかりやすい工程です。
   ひも状にした土を楕円に巻き、重なる部分を押しつぶすように
   くっつけて空気を抜きつつ1列ずつ継ぎ足していきます。
   内側は上に載せた紐状の土を板にかぶせるように親指の腹で押し付け、
   外側は底板の土から持ち上げるようにひとさし指で引っ張り上げるように
   紐を皿状に一体化させていきます。
   とにかく薄くなりすぎないように、
   そして不均等にならないように!指先の感覚を大切にしながら
   作業を進めましょう。人間の指って偉大だなとしみじみ感じた工程でした。


▲後から手回しろくろを活用するときは台の下に土を置くとズレません

工程④乾かす


   形が完成したら、仕上げをしやすい硬さになるまで乾燥させます。
   初心者だと、だいたいここまで仕上げるのに2時間ほどかかるので、
   ドライヤーで追加乾燥させたらすぐに次の工程に入れます。
   (菅原陶芸教室ではドライヤーではなく1週間自然乾燥させます)
   目指す固さは、触っても凹まないけど、爪で削れるチョコレート程度です。
       

▲ヘラいろいろ

工程⑤整える

 
   土がほどいい硬さになったら、いろいろなヘラ(カキベラやカンナなど)
   を利用して楕円のお皿の形を整えていきます。
   これが円だったら、ろくろと体を固定すると
   割とシステマチックに形を整えられそうなのですが、
   楕円なので、なかなか力加減が要求され、削りすぎの場所ができたりして
   なかなか難しかったです。削りすぎた場合は土を足して対処しました。
   


▲土の太さは積み上げた時より細目の小指程度を目指そう

工程⑥高台をつくる


   花瓶の底に高台と呼ばれる下駄というか靴というか、
   安定して花瓶を置くための丸いわっかを付けることになりました。
   釉薬をかけるときにも、高台の有り無しで
   難しさもちょっと変化するようです。
   
   ふたたび土をひも状に伸ばし、わっかにします。
   輪を乗せる部分のお皿の底面を針で荒らし、
   どべ(水で溶いた土)を塗って押し付けるように接着します。
   ある程度ヘラなどで形を整えたら、
   上に板を乗せて水平を確認します。
   高さが足らなければ土を足して整えなおし。
   水平にお皿を置くのは難しいと感じた作業でした。



▲菅原生涯学習市民センターの
陶芸用電気窯
大人女子が脚伸ばして入れるくらいの大容量です

工程⑦素焼きする


   最低でも1週間自然乾燥した後、
   800℃で作品を焼き上げます。
   土から完全に水分を抜き、土質をレンガ状に変化させます。
   窯がスカスカだと、なかなか温度が上がらないため、
   他の作品も沢山詰めて焼きました。
   菅原の電気窯で半日焼いて、
   取り出すのは3日後、作品が常温まで冷めてから。
   待つのが楽しい3日間でした☆
   
   


▲撥水材を塗ったところ
ピンク色をしています

工程⑪撥水処理をする


   素焼きが終わってレンガや植木鉢のような質感になった
   作品の底、地面との接着部分に撥水材を塗ります。
   撥水材を塗っておかないと、底面にも釉薬がしみこみ、
   棚板(※作品を窯に入れるための耐熱タイル)と作品が
   くっついて剥がれなくなってしまうので
   とても大切な作業になります。
   
   特に私は初心者!
   熟練工は釉薬を筆塗りするなら撥水材は要らないよ、
   と話していましたが、ここは安全第一で!
   急がば回れ、としっかり撥水処理をさせていただきました~!    


▲釉薬
成分が沈殿しやすいので
掛ける前にかならず攪拌します

工程⑫釉薬をかける


   釉薬という名前のしゃばしゃばの泥を作品にまとわせます。
   だいたい3秒程度で終わらせないといけない、一発勝負の工程で、
   できるだけ手が作品に触れないように持ち、泥の中をくぐらせる作業です。
   ※それ以上釉薬を被ると、焼いている最中に垂れ落ちて
   棚板にくっついてしまいます。
   ほぼ一瞬で乾いてしまうのですが、手が触れていたところは
   指についた分を擦り付けて対応します。
   
   これはとにかく初心者には難しい作業でした。
   指が重さで負けそう、釉薬の中に落としそう!
   撥水材を塗ったところに被った分をきちんとぞうきんで拭って
   釉かけ作業は完了です。
   今回は白土の上に白い釉薬をかけてみました。
   つるっと白い、無機質寄りな仕上がりになりますよーに!  


▲陶芸部会の先生方の作品と一緒に焼きました

工程⑬本焼きする


   1230℃で作品を焼き上げます。
   釉薬は泥水なのに、1230℃で焼くとガラス質に変化します。
   作品をツルっとさせて、作品を水をためれる素材にする作業です。
   今回も素焼きと同様に他の作品も沢山詰めて焼きました。
   菅原の電気釜で丸一日焼いて、取り出すのは作品が常温まで冷めてから。
   見た目はグレーでしかない今のこの作品、
   予定通り白く変身してくれるかしら……?
   わくわくどきどき、宝箱の開封を待つのは
   なかなか気忙しいものなのですね。
   

       



工程⑭完成!


   無事完成しました!
   花器として作りましたが、シンプルすぎて
   サラダボウルのようにも見えますね?
   今回も白土にマグネシアマットの艶消しの白い釉薬を掛けたので
   とろっとした白さが特徴的な作品になりました。
   今回は基本の手びねりを中心につくったので、なおさら
   シンプルに仕上げるのが難しかった印象があります。
   私も菅原陶芸教室通いたいっ!となった作陶体験でした。
   

       

楕円に作る、手びねり花器 を終えて

陶芸倶楽部


    ▶大判タタラでぐるり!筒形花瓶で飾ったお花の茎が折れてきたとき、
    花だけを水に浮かべれるようなシンプルな花器が欲しい、と依頼されて挑戦した作品です。
    レイカフェの窓枠の幅に合わせて楕円形に、とお願いされたので、
    形成がちょっとばかり中級者向けの難しい作陶となりました。
    作り方でも触れましたが、今回挑戦した「紐づくり」は、陶芸の原点ともいえる技法です。
    もっともシンプルな作り方だからこそ、どんな形でも作れるので、
    縄文土器などの複雑な形の陶器も生まれたのかもしれません。
    ただ、シンプルな作り方は、シンプルだからこそ作り手の技量が作品に直接出てしまいます。
    陶器は薄くなりすぎれば割れるし、厚くなりすぎると空気を含んで焼成時に破損する危険があります。
    一定の厚みを保って土を積み上げるのは一朝一夕で身につく技術ではなさそうです。
    厚みはこれでいいのかな、この形でいいのかな、と土と向き合う時間はなかなか面白い体験でした。
    本当に楽しかったです。陶芸部会の先生方に感謝でした!


今回の記事を書いた人について




 ・ 

菅原生涯学習市民センター 工作担当 よしだ

アフターファイブも休日もアトリエにこもって絵を描くのがライフワークな、生粋のインドア女子。芸術系大学ガラス造形コース卒。
陶芸は今回を除くと日帰り体験を3回ほどだけ、の習熟度です。また皆さんと大きなものを工作できる日を楽しみにしております。