コミュニティースペースMOKU1周年記念事業地域トークセッション
「地球のカタチ、くらしのカタチ」

 本当の「自立」とは、

 頼る場所がたくさんあること。


2020年11月26日、菅原生涯学習市民センターコミュニティスペースMOKUで「地域のカタチ、くらしのカタチ」をテーマに、トークセッションが行われました。
本来は、MOKUオープン1周年事業として2020年2月にイベントとして開催予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため延期。今回、実施にあたり非公開でトークセッションの収録という方法に変更となりました。
トークセッションの冒頭では、地域の方の声を紹介。「じっくり腰を落ちつけて、心地よく暮らすには地域のコミュニティが大切」「人とのつながりが変化しているからこそ、場所ときっかけが必要」「誰かに会う、誰かと接することで、人とのつながりが広がっていく」。
そんな声にこたえ、地域の課題を考えるために、参加した3名には、それぞれの活動とともに、地域コミュニティの在り方や、コロナ禍を経て、地域コミュニティがどう変わっていくのかについて語っていただきました。

参加者プロフィール・活動内容


 ・  西川 亮


NPO法人Co.to.hana代表理事。「デザインで社会を変える」ということを目的に活動。 課題の本質を探り、必要に応じた方法で、個人、団体、企業、行政と力を合わせ、地域や社会の課題解決に取り組む。

 ・  宝楽 陸寛


SEINコミュニティLAB所長。多様な地域組織と人をつなぎながら、住民参加のまちづくりに取り組んでいる。住民自治の当事者へ寄り添い、「役割と稼ぎが巡りめぐる」ことを大切にした、コミュニティ再生のパイプ役を担っている。

 ・  ファシリテーター:水木 千代美


NPO法人まどり代表。国産材を使った居場所づくりをサポート。自身も居場所を運営。 学習支援や子ども食堂を運営。NPO法人COCONI代表として子どもたちの主体的な進路選択支援に取り組む。


地域コミュニティには無限の可能性がある。

水木 地域コミュニティというと、比較的高齢の方が、何らかの価値を見出して関わっているケースが多いと思うのですが、お二方はコミュニティ活動にどのような価値や喜びを見出していますか。

西川 僕は「デザインで社会を変える。」ということを目的に、Co.to.hanaという団体を運営しています。大学でデザインを学び、デザインに可能性を感じて今の活動につながりました。実は子どもの頃は、家庭が裕福ではなくて、「やりたいことができない」という葛藤を抱えて生きていました。荒れた心で日々を送ってたある時、地域の野球チームで監督をしている方と出会いました。その方が、365日どんなときもそばにいてくれたのです。野球だけでなく、人としてどうあるべきか、ということも教えてくれました。彼に出会えたことが、僕の人生にとって、とても大きかった…そんな経験が、今の活動につながっています。

現在の活動例としては、Co.to.hanaの事務所がある北加賀谷で、空き地だったスペースを畑にし、キッチン設備を備えた、コミュニティスペースを作りました。ここで野菜を育てるのですが、真の目的は、畑を通じていろんな人たちが出会い、関係が生まれることです。この活動が派生して、商品開発につながることもあるんです。ここで活動をはじめた人が、次は講師としてその活動を広めたりと活動の輪が広がっていくことは、僕たちにとっても豊かな体験です。個人や団体をつなぎあって、活動の輪を広げていくことが、僕たちの喜びです。

宝楽 僕は、ニュータウンの課題解決が日本社会の課題解決につながる、という視点で活動しています。今は泉北ニュータウンのまちづくりに携わっているのですが、自分自身もまちの中に入り込んで、実際に居場所を回しながら活動を行っています。今年は、PTA副会長もしているんですよ。

地域コミュニティの課題は、住民自治の当事者をどう作っていくか、ということだと感じています。仲間を集め、拠点をつくって、活動を広げる。必要によって協働することも大切だと思いますね。

活動の中で重視していることは3つ。 
①  地域の声が多くの住民から集まるようにする 
②  地域の困りごとが住民の間で共有される
③  その困りごとを住民が力を合わせて解決する
ということです。

高齢者、子育て世代、子どもたち…同じ地域で暮らしていても、世代によって、求めることは違います。そのため、地域の課題を解決するには、さまざまな世代からの声を聞くことが重要だと思っています。

たとえば、地域コミュニティの中で、子どもと高齢者がつながると、そのつながりが、子育て中のママたちにも広がります。すると、子育てママたちの困りごとを、高齢者の方たちが、その経験と知恵で解決していく…といったつながりが生まれていくのです。その中で、それぞれの特性や特技が活かされていくわけですね。料理が得意な人、大工仕事が得意な人…。大人だけでなく、子どもたちもそれぞれ、特技を発揮でききる場が出来上がっていくわけです。


今回のコロナ禍では、休校期間中もリモート会議などを行って、さまざまな世代から困っていることや、要望を聞いていきました。もともと、地域にコミュニティが育っていたからこそできたことだと思っています。その中で、高齢者の方が、オンラインで小学生に将棋を教える という活動も生まれました。

実は僕も西川さんと同じように、小学生の頃に打ち込んだクラブ活動を、地域の方たちに支えてもらった経験があります。挫折も達成感も含めて、周りの方たちの支えがあったからこそ、味わうことができました。「地域の伴走者になりたい」という思いは、この頃に芽生えたように思います。だから今、コミュニティ再生のパイプ役として、さまざまな活動ができていることに喜びを感じています。

頼れる人がたくさんいることが、本当の「自立」。

西川 人は一人では生きていけないので、いろいろな人と関わることで、新しい可能性が広がっていくと思います。そういうつながりは、たくさん持てたほうがいいと思いますね。コミュニティって生き物なので、いい時もあれば、すごく苦しい時もある。だからこそ、ひとつのコミュニティではなくて、複合的にいろんな居場所を作ることが、生活の豊かさにつながると思っています。僕はそんなに大きなコミュニティではなくて、小さなコミュニティを作っていきたいと考えているんです。

水木 それは私も同感です。椅子に、脚がたくさんあったほうが倒れないように、人も居場所がたくさんあったほうがいいと思うんです。

宝楽 たしかに、コミュニティは選べるほうが豊かですよね。気楽に話せる場所、共通の趣味をもつ仲間、ママ友、パパ友など…それぞれ自由に、コミュニティを行き来できるほうがいいと思うのです。コミュニティには多様性も大切ですね。


水木 そんなふうに、さまざまなコミュニティで活躍している人がいる反面、地域とかかわりたいけれど、一歩が踏み出せない…という人もいると思うんです。そういった方たちには、どんなきっかけ、場所が必要だと思いますか。

西川 まず、「実際に活動している人」の存在が必要だと思いますね。自分がやりたいことを実践して輝いている人。そういう人がひとり、ふたり…と増えると、「この場所では自分の思いを発信できる」という空気が出来上がっていきます。そういった場があれば、最初の一歩を踏み出すきっかけになるんじゃないでしょうか。


宝楽 僕たちは今、泉北ニュータウンで、駅前広場が365日、いつでも活用されるための取り組みを行っています。MOKUも、広場だと思いますよ。いろんなところから、いろんな人が集まってくる。そこからつながりやアイディアが生まれる。

水木 「なにかをやりたい」「私はこれが得意」ということがあっても、それを表現する場やきっかけがない。そういった人には、夢や思いを発信する場を提供することも大切ですね。

西川 「何かをやりたい」と思っている人の背中を押してあげる。それが僕たちがやっている伴走支援です。

水木 これまでは、「自立」というと、人に頼らないことだという風潮があったかと思うんですが。本当の自立というのは、頼るところがたくさんあること。私自身も、つらい体験があったときに、たくさんの人たちに支えられました。頼り頼られる、支え支えられる関係は、自己肯定感にもつながるんですね。だからこそ、未来を担う子どもたちも、コミュニティの中で、さまざまな人に支えられ、自分も誰かを支えることができるんだ、という経験を培ってほしい。自分の存在が必要とされる経験は、大人になっても活かされていくと思うんです。

今こそ、コミュニティが広がり、多様化していくチャンス。



水木 ところで、このコロナ禍で、活動はどのように変わりましたか。

西川 在宅ワークなどが増えて、コミュニティにとっては、ある意味チャンスだと思っています。というのも、これまで地域コミュニティに携わってきた方は、時間の融通が利く人たちが主でした。イベントや集まりがあるとしても、「時間が合わない」と、参加することを断念していた人たちも、このコロナ禍で、地域とかかわる時間やチャンスが増えたのではないかと思っています。

また、人の力やアイディアを活かすという意味では、昨今のデジタル化は、その可能性を広げてくれていると思っています。距離が離れていても、環境が違っていてもつながりあえる。これまでは、交通費や時間を考えると、なかなか実現しなかったような出合いも、実現すると思うんです。それが地域コミュニティに多様性をもたらしてくれると思います。このチャンスを活かすためにも、デジタルに馴染みのない方たちを、支援していくことも必要だと感じています。


宝楽 「パソコンやスマートフォンを使って思いを発信する」という手段が、コロナ禍によって、より身近になりましたよね。それに、「4人以下の集まり」というのが、小さなコミュニティづくりにはちょうど良いサイズなのかもしれません。10人、20人の集まりとなると、少し気後れしていた人でも、4人以下となると、参加してみようかな?と思えたり。そういった方たちの参加によって、活動の輪が広がっていくと思います。MOKUで体験の主人公になれる人がますます増えていけばいいですね。

西川 僕自身コロナ禍で、これまで自分をないがしろにしてきたことに気づきました。自分と向き合い、自分の思いに気づくことは大切。MOKUに集う人たちも、自分を大切にして、この場所でさらに輝けたらいいな、と思います。

水木 お二人の経験のように、支えてくれる人、背中を押してくれる人との出会いが人生を変えていくと思います。MOKUではそういう関係を育てていきたいですね。MOKUは地域の皆さんの舞台(ステージ)ですから。
今日はありがとうございました。


最後に



コロナ禍で、これまでの「当たり前」が当たり前ではなくなり、人とのつながりにも、大きな変化がありました。そのような時だからこそ、コミュニティの大切さを再確認した方も多いのではないでしょうか。

地域コミュニティは縁をはぐくむ場所です。出会ったその時は気づかなかったとしても、それが、後ほどなにかのきっかけになるかもしれません。Withコロナの時代に、人とのかかわりは変化しましたが、形は違っても、つながり支えあうことはさらに大切になっていくことでしょう。

冒頭で紹介した地域の方たちの話でも「最近は、人との関りが、持ちにくくなっている」という声がありました。些細なこと、他愛のないことでも大丈夫です。自分の思いを語り、誰かの話に耳を傾けてみてください。すると、世界が少し変わるかもしれません。

人とのかかわり、コミュニティづくりのきっかけとして、コミュニティースペースMOKUをぜひ活用してくださいね。



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